「また落ちた。もう何社目だろ。私って何がダメなんだろうね」
そのメッセージが来たのは、平日の夜11時過ぎでした。送ってきたのは大学時代からの友人。30代半ばで転職活動中の彼女は、すでに数社からお見送りの連絡をもらっていると聞いていました。
私はしばらく、スマホを持ったまま固まっていました。
採用に関わっていると、「お見送り」にした方の数は自然と積み上がっていきます。書類で通過できなかった方、面接でとても印象がよかったのに最終手前でご縁がなかった方。そのたびに何かしらの理由があって、でもその理由を本人に詳しく伝えることはほとんどありません。
採用担当が候補者をお見送りする際に判断していること、主なポイントを挙げると以下のようになります。
- 求める人物像・スキルセットとのマッチ度
- 入社後に活躍するイメージが持てるかどうか
- チームや社風との相性(カルチャーフィット)
- 現場の受け入れ余力やポジションのタイミング
これらは「能力が高いか低いか」だけで決まるものではありません。応募者本人に何も問題がなくても、タイミングや社内の都合でお見送りになることは普通にある。でも、「あなたには問題ないんだよ」という言葉は、落ちた人には慰めとしか聞こえない。その非対称性が、私を黙らせました。
長く人事をやっていると、優秀なのに縁のなかった方を何人も見てきます。逆に「採用するか少し迷った」という方が入社後に大活躍することも、決して珍しくない。採用って、精度を上げようとすればするほど「落とす理由を探すゲーム」になっていく節があります。
でも本来は、出会いに似た何かだと思っています。その日の面接官のコンディション、会社の事業フェーズ、ちょっとした言葉のすれ違い。そういう偶然が積み重なって「内定」や「お見送り」という結果になる。それは本人の価値とは、必ずしも一致しない。
友人に私はこう返しました。「あなたがダメなんじゃなくて、まだ出会えてないだけだよ」と。伝わったかどうかはわかりませんが、それが正直なところでした。
選ぶ側と選ばれる側の非対称性を少しでも埋めたい。そう思うようになってから、採用プロセスの設計や候補者への連絡文、面接後のフィードバックの仕方が変わった気がします。採用代行(RPO)という仕事は、突き詰めると「採用体験をより誠実なものにすること」だと私は思っています。
友人のLINEへの返信は短くなってしまいましたが、あの夜のもどかしさが、今も私を現場につなぎとめている理由の一つです。

